当社へよく頂く問い合わせの中に、ケイ酸質系塗布防水材とポリマーセメント系塗膜防水材の違いは何?と言う事があります。ケイ酸質系塗布防水材については幾度か特性などについてご紹介してまいりましたが、改めて「違い」や特長などをご説明したいと思います。
コンクリートは建築物に多用されなじみも多く強靱強固というイメージもあるかと思います。一般の方からすればコンクリートは水も通さないと思われがちです。
たしかにコンクリート自体の透水係数は小さく、ほとんど水を通さない物質と言えますが、同時に硬化・乾燥に伴い収縮する性質を持っています。そのためひび割れの発生は避けられません。鉄筋の拘束力が働くためひび割れは分散しますが、すべてのひび割れを漏水しない大きさに抑えることは出来ません。
コンクリートを顕微鏡で拡大すると、セメント粒子や骨材などの間に小さな隙間(毛細管空隙)ができています。その隙間より水が徐々に浸水していき漏水がおきたり、浸水箇所の水が凍結・膨張することでクラック(割れ)が発生したりします。
つまりコンクリートは大きな意味で水を通す(浸水する)材質なのです。極端な例ですがスポンジのように水が瞬く間にしみ込んでいくと言うのではなく、じわじわと時間を掛けてしみ込んでいくということです。近年コンクリート打ちっぱなしの建物が多いのですが、特に壁面では雨が降ってもしみ込む前に水分が乾燥すれば実質的には内部には影響は少ないことから、コンクリートは水を通さないと思われていることが多いようです。
外壁に長期間にわたって雨が降り注ぐのはそう頻繁にある事ではありません。1年365日雨が降ることもありません。一過性のものです。ところが、水がたまるところであればどうでしょうか?常に水がたまっていなくとも一時的な雨水貯水槽などでも同じ事が言えますが、常に水が接している(水圧が掛かっている)状況では、コンクリート打ちっぱなし建築物の外壁とは条件が変わってきます。
つねに水に接していて尚且つ常に水圧がかかる状況だと先に説明した空隙に水がじわじわとしみ込んでいきます。そうするとコンクリート内部の鉄筋が侵食され、錆びて曝裂し、さらにひび割れを大きくして、コンクリートの強度を弱めてしまい、内部への漏水のリスクを増大させてしまいます。
そこで、水が溜まるようなところには防水が必要になります。
コンクリートを防水する方法(工法)は色々あります。その一つの工法として存在しているのが、ケイ酸質系塗布防水材です。ケイ酸質系塗布防水材を躯体コンクリートの表面に塗布することにより、特殊活性剤(ケイ酸質)が水を媒介してコンクリート内部に浸透、水の通路となる毛細管空隙を結晶体となって閉塞し、コンクリート自体を緻密化することで、防水効果を発揮します。
塗布防水であることから、工程も非常に少なく済みますので工期も短く、しいては工費も安く収まります。
ポリマーセメント系塗膜防水材とは、「塗膜」防水です。つまり高分子ポリマーを主原料とした液材と特殊無機防水性骨材を混合した防水塗材を幾重にも塗り重ねる防水工法です。
つまり躯体コンクリートの表面に塗膜を生成しコンクリート表面に水を触れさせないという工法です。
水槽類地下用 GRG工法での塗り重ねイメージ図
屋外屋内用 RX工法での塗り重ねイメージ図
ケイ酸質系塗布防水材に比べて工程が多く手間も掛かります。しかしケイ酸質系塗布防水材は単に浸透させるだけですが、ポリマーセメント系塗膜防水では必要に応じて(防水箇所)工法を選択することができるのも大きな特長です。
ケイ酸質系塗布防水材はコンクリートの表面に浸透させるものですので、コンクリート表面はむき出しになります。また浸透といえども2〜3ミリ程度に留まりますので、もし表面に割れなどの欠損が生じた場合防水機能は失われてしまいます。
一方ポリマーセメント系塗膜防水材はコンクリート表面に塗膜を作るのでコンクリート表面が露出しません。仮にコンクリート表面に微細なひび割れが生じた場合も弾性の防水塗膜が追従するため、すぐに防水機能が失われてしまうと言うことは殆どありません。
ケイ酸質系塗布防水材の懸念事項の一つとして、表面の割れがあります。コンクリートは強靱でそう簡単に割れないと思われがちですが、前述したとおり、硬化・乾燥に伴い収縮する性質があるため、条件が重なると簡単に表面が割れてしまいます。代表的な例としては直射日光が当たる場合です。つまり外壁や屋上では直射日光や気候の変化の影響をもろに受けてしまいます。
特に夏冬の寒暖差や、気温が氷点下を下回るような場合には凍結の問題も有ります。水分を含んだまま凍結してしまうとそこから割れが生じやすくなります。建物の揺れにも影響されます。地震などは最たるものですが、場所によっては近隣に幹線道路があれば大型車の通行で揺れの影響を少なからず受けてしまいますし、建物の形状や立地によっては風の影響で揺れているのでその影響も受けてしまいます。
表面そのものは防水効果があっても建物の揺れに追従出来ずにコンクリートが割れてしまった場合には、ケイ酸質系塗布防水材では防水効果が期待出来なくなります。
他方で、ポリマーセメント系塗膜防水材では防水層でコンクリート表面を被覆する事から、防水機能への影響がかなり軽減されます。また弊社ビッグサンでは防水層の伸びも優れており常識の範囲では防水層が追従しますので、防水層が割れて躯体コンクリートむき出しになる事はまずありません。
悪条件を放置していたことから防水層が劣化してしまい追従出来なくなることは希にありますが、定期的な点検などで日常の手入れが適切に行われていれば概ね大丈夫です。
★JASS8 メンブレン防水層の性能評価試験結果
https://www.dainichikasei.co.jp/topics/jass8.html
★17年ノーメンテナンスで経過したRX工法塗膜(ビッグサン)の状況を検証
これらのことからケイ酸質系塗布防水材は直射日光があたらず、常に水が滞留しないところが向いており、ポリマーセメント系塗膜防水材ビッグサンでは、屋上をはじめとする様々な箇所に適した工法を選定することが可能です。
ケイ酸質系塗布防水材の大きな概念での使用箇所としては、湧水ピット・雨水貯留槽などが向いているとされています。とくにピット内部では高湿なことがおおく、湿潤下地でも施工が可能である事からも向いていると考えます。
しかし給水系など水圧が掛かるものや汚水槽などには適しているとはいえません。また屋上や外壁などの気候の影響を受けるところでは不向きです。また水は常に無いもののコンクリート表面を保護するという観点からも湧水ピットや一時的な雨水貯留槽などには向いていると思います。
とはいえ、そもそも保護のために出来ているものではありませんので、保護効果だけで選定することには危険性があります。
その為に大日化成ではGA-2工法というハイブリッド工法、コンクリート表面に防水塗膜を形成すると共に、特殊活性材がコンクリート内部に浸透し、緻密化することで浸透性塗膜防水材と同じ効果を得る工法もございます。
昨今なかなか予算が取りにくくなり防水層の代わりに浸透性塗膜防水材を使用してはという向きが少なからずございます。工程が少ない為に当然ながら標準施工費が安価に済みます。しかし安いからといってそれで良いわけではありません。長期的な見地から逆に改修時期を早めてしまうことも懸念されます。
もし、費用面で本来であればポリマーセメント系塗膜防水材を使用するところを、経費を安価に抑えるために浸透性塗膜防水材を検討されているのであれば、できる限り避けられた方が賢明です。当社もGA−1という浸透性塗布防水材も上市しておりますが、適切な箇所への施工をお願いしております。
★浸透性撥水剤とスカイコートW、タイルが割れても浸水しないのかを検証しました
タイル面に塗布した浸透性撥水剤とスカイコートWでの検証ですが、理屈は同じ事です。
それぞれ適材適所であれば優れた防水工法です。しかし使い方を間違えれば本来の機能を全う出来ずに漏水が起きてしまいかねません。
どういった箇所に施工する必要があるのか、十分ご検討のうえで工法を選定していただければと思います。
GA-1(ケイ酸質系塗布防水材)ページはこちら
↓ ↓ ↓ ↓ ↓
https://www.dainichikasei.co.jp/product/bigsun2/bigsun2_kouhou.html#GA1
GA-2(浸透性塗布防水材)ページはこちら
https://www.dainichikasei.co.jp/product/bigsun2/bigsun2_kouhou.html#GA2
屋内屋外用防水材 ページはこちら
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水槽類地下用防水材 ページはこちら
https://www.dainichikasei.co.jp/product/bigsun2/